あの子はいま、元気だろうか。あの時間のことを、憶えているかな。あの時間のことを、あの子は、どんなふうに留めているかな。

スターバックスのカップが白色から赤色に、クリスマス仕様になるこの季節。毎年、それを目にする度に思い出すことがある。高校生の頃の、留学先のこと。あきれるほどよく通っていたあのスタバ。学校の近くの、小さなスーパーマーケットのなかにあったあの場所。ひとりで、学校の帰りに、バレーボールクラブの練習のあと、バスを待つ時間に、ESL(English Second Languageの略で、留学生や、英語が母国語ではない生徒が受けることができるクラスのこと)の子たちとのスケート場がオープンするまでの時間、授業後の暇つぶしに、遊んだ後の休息に、たくさんお喋りしてよく長居をしていた。恋バナとやらもしたな。頻繁に通っては、フラペチーノだとかクリスマス限定のものだとかをオーダーして飲んだ。ホットチョコレートの発音に自信がなくて、店員さんによく聞き返された。日本人メンバーだけで集まって、なんてことない話題で盛り上がったりもした。

あの時間、ほんとうに楽しかったなあ。そしてほんとうに、頻繁に、スタバに通っていたなあ。今じゃ考えられないなあ、金銭的に(両親にはそういった意味でも感謝と申し訳なさでいっぱいである)。そういえば、サンタクロース(別名:ホストペアレンツ)がクリスマスプレゼントのひとつとしてスタバのカードを贈ってくれたっけなあ。

実際のところ、留学期間は約一年間で、スタバには季節問わずよくお世話になっていた。それなのに、あの記憶を思い出す一番のきっかけはいつも、赤くて、きらきらした、あの寒い季節のスターバックスだ。あの一年の中で、あの時間が最高に楽しくて仕方なかった。あれからもう何年も経って、あの頃あの場所で一緒に過ごしたほとんどの子たちとは、連絡を取り合っていない。わたしを含めた、帰国直前の留学生のお別れ会を兼てのホームパーティーの夜、わたしは「絶対に、またこの仲間と再会できる。絶対。」と強く感じた。しかしそれは叶わないまま、今に至る(実際は、2人の子とは日本で再会したが、わたしの場合はそれっきりだ)。わたしたちはお互いフェイスブックでも繋がっていて、離れてからも1年くらいはそれが続いていた。だけれども、アカウントを新しくしたり、わたしのようにもうチェックしなくなったりして、その繋がりは色を薄めていった。もうあの子の姿を画面越しに見つけても、声を掛けることはないし、あの子がわたしにそうすることもないのだと思う。

しかしながら、案外寂しいとは感じない。あの時間があの時間のまま、わたしの中の隅っこに存在していて、たまに、例えば赤くなったスターバックスを見かけるたびにそれが手前のほうに出てきて、ちょっとほっこりするから。正直、良い思い出だけじゃなくて、消し去ってやりたい記憶もひっついているあの時間。それでも、別にそれを”黒歴史”だとは思っていなくて。むしろそれをひっくるめて、わたしにとってはとても大切で、不思議で、愛おしい時間だ。

その時間のことを、今、この地球上のどこかにいるはずのあの子は、どう留めているのだろう。きっと、それを知ることはないのだろう。きっと、それでいいんだと思う。わたしと同じように感じていてほしいなんてことは、これっぽっちも思わないし、忘れていたとしても、それはそれでいいと思う。悲しくなんかない、というと少し嘘になるけれども。同じ時間を過ごしていたようで、みんな、ばらばらの時間を生きていたんだよな、きっと、と今になって思う。なにが言いたかったんだっけな。とにかく、わたしは来年も、再来年も、きっと赤い色のスターバックスをみて、あの時間を思い出す。

akein
のんびりと社会人奮闘中です。その傍らで好きなものに触れ、好きなことを全力でやりたいなと思っています。最近ひとり暮らしをスタートさせて、楽しんでいます。しかし家事全般が面倒くさいなと感じはじめています。牛乳を毎日飲まないともやもやします。お酒よりカフェオレが好きです。
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