冬の思い出といえば、2008年にあった椎名林檎さんのデビュー10周年記念のコンサートだ。当時高校2年生だった私は、なんとかチケットを手に入れて隣のクラスの大好きな友人と参加するべく地元から電車を乗り継いで会場に向かった。途中で原宿に立ち寄り、竹下通りを歩きながらコンサートのことやお互いの好きなお洋服や趣味について色々話した。今となっては原宿を歩くことなんてなんでもないけれど、その頃はまだ数えるくらいしか訪れたことがなかったし、大好きな雑誌の中で何度も想像を膨らませた憧れの街だったのでそこに自分が立っているだけでとてもわくわくした。コンサート会場の最寄り駅に到着してすぐ人の多さに圧倒されつつグッズ販売の行列に並び、友人とお揃いのTシャツを買ってプリクラを撮った。いつもCDやiPodで聴いていた歌声を初めて生で聴けたことに言葉にならないくらい感動して、帰りの電車の中もずっとどきどきしていた。数日はそのコンサートの余韻を引きずっていたことを覚えている。

この10年の中で、気がつくと高校も大学もあっという間に卒業してしまった。長いと思っていた学生時代は終わり、社会にうまく馴染めないながらも一応就職も経験した。歳を重ねるにつれて初めてコンサートで感動したあの時の気持ちや、10代の頃のような好奇心や情熱がどんどん薄くなってきている。多方面でチャレンジすることに臆病になってきている自分がものすごく嫌いだ。昔はプリクラ帳を可愛くしたり、絵を描いたり、自分を表現することが楽しかったはずなのに。気になることはたくさんあるし、何かに突き進んでみたいけれど、失敗が怖くて何から始めたらいいのかわからずにずっと足踏みをしている。正直10年前のわたしは今のアンビバレンスな自分にとてもがっかりすると思う。

ふと思い出して、自分が10年前、高校生だった頃のブログを検索してみたらなんとまだ残っていた。恐る恐るページをのぞいてみる。ほとんどは当時の日々の嘆きばかりだった(いわゆる田舎の進学校で、センター試験に向けて毎日のように課題と小テストに追われていたのだ)けれど、そんな中で驚いたのがプロフィールや記事に残っていたわたしが好きなこと、大切にしていたものが今も変わらず自分に欠かせないものばかりであったこと。世界も自分も変わってしまったことばかりだし、変化は悪いことでは決してないけれど、当時の気持ちを少し取り戻せたような気がして嬉しかった。今思えば、コンサートを一緒にみに行った子と友達になったきっかけは、仲良くなりたい!と思って隣のクラスに行き自分から声をかけたことだった。彼女との思い出の場所は放課後の図書館。その時の高校の図書館司書がとにかく不思議な変わった人で、図書館には大小さまざまななぬいぐるみやフィギュアが置いてあった。本や雑誌のセレクトが絶妙で(蜷川実花さんの写真集、装苑、嶽本野ばらさんの小説や羽海野チカさんの漫画も置いてあった)、田舎育ちで知らないことばかりだったわたしにとって、とにかく刺激的で大好きな場所だった。冬に雑誌のバックナンバーを早い者勝ちで譲ってくれるイベントがあって、彼女と2人で一年分の装苑を分け合った。わたしたちのほかにはあまり読者がいなかったからか、とても綺麗な状態の装苑は今でも捨てずにとっておいてある。残念なことに、私が3年生になったときに急に司書さんが異動してしまった。新しい司書さんが赴任して図書館はがらりと雰囲気が変わってしまったのだけど、偶然にも今年度からまた私の母校に赴任してあの世界が戻っているようだ。そしてその友人とは今でも連絡を取り合っていて、離れて暮らしているけれど定期的に会っている。彼女とあの不思議な図書館との出会いは、この10年の中でもとても大きな存在だし、これからもきっと大切な宝物だ。次に地元に帰った時は、彼女とあの図書館へ行って司書さんに会うことが密かな楽しみである。

これは私の自己表現の新しい一歩。これがきっかけになって、次の10年後のわたしが今より自分を好きだといいな、と冬の星空に願いを込めて。

Hazel
1991年生まれ。ただ今北米の小さな学術都市にて浮世離れ生活中。凄まじい乾燥と肌荒れに悩まされながら、この地で2年目の冬を過ごしています。好きなものは本とイギリスとチョコレート。
Instagram: @nutschocofudge