『ROOKIE YEARBOOK』日本版刊行を記念して、アメリカのティーンネイジャー女子向けウェブマガジン「Rookie」創設者、Tavi Gevinson(タヴィ・ゲヴィンソン)さんにSister Magazine編集部がインタビューさせていただきました。

——今日はお話する機会をいただきありがとうございます。私たちの運営している「Sister Magazine」は「Rookie」の翻訳インターン生が「Rookie」に影響を受けて始めたマガジンなので、お会いすることができて光栄です。

こちらこそ、お話を聞いてとても嬉しかったです。

——日本にはたくさんの女子向けメディアがあるんですが、ほとんどは地位のある男性によって運営されていて、若い女の子に物を買わせることが目的だったり、ダイエットすることをやたらと迫ったり、男性に好かれることを第一とした「モテ」特集などが取り上げられていることが大多数です。

わかります。

——なので「Rookie」を初めて読んだときとても衝撃を受けました。自由で、勇敢で、女の子たちの「ほんとう」の声をメディアを通して受け取ったのは初めてだと感じました。そして日本にも「Rookie」のように、たとえば社会問題や政治について、また女性として生きる上で直面する困難など女の子たちが話したいことについて話し合える場所が日本にも欲しいと感じたんです。でも一方で、私たちはどこにいてもアクセスできるインターネットでその場を作りたかったのですが、企業や団体から援助を受けるということはなかったので、さまざまな困難がありボランティアとして存続するのがとても難しかったです。なので私たちは「Rookie」がどのようにして運営されているのか、とても興味があります。また、紙媒体ではなくインターネットでマガジンを始められた理由なども伺いたいです。

「Rookie」は経済的にオンラインで始める必要がありました。同時にマガジンを運営することについて色々と学んでいるうちに周りの人から「『Vice』がやったようにできるんじゃない?」と言われました。私は記事を読んでもらうのに読者からお金を取りたくなかったのでそういうアドバイスを受けたのだと思います。

「Vice」は昔は大きな街のクールなコーヒーショップに無料で置いてある雑誌でした。強い広告のおかげで無料だったんです。
でも私たちは他の選択肢を模索しました。私はあなたが「Sister Magazine」について言ったみたいに、「Rookie」をアクセスしやすいものにしたかったんです。また、世界中の人にとってもっとグローバルなものを目指しました。たとえそれが英語で書かれていて、ほとんどの寄稿者がアメリカ人だとしてもです。今ほとんどのアメリカのメディアはニューヨークにあります。でもその時私はシカゴの郊外に住んでいました。だからニューヨークは私の活動の中心ではなかったし、読者にも文化を体験するため、創作をするためにはニューヨークにいなければいけないというふうに感じてほしくなかったんです。

「Rookie」を言い表すのにいいと思ったことで、いつかMiranda Julyが私に言ったことがひとつあります。
「『Rookie』は『本当の人生』が他のどこかで起こっているように感じさせない。『本当の人生』はあなたで、あなたの部屋で、読書をしていたり創作をしていたりする。」

だから私はこれからもそれを実現しようと思いました。たとえ今私が大人になってニューヨークにいても、やっぱり私は「Rookie」が女の子たちのそれぞれのベッドで読むものようなものであってほしいと思ったんです。

——すごくわかります。私も今は都会に住んでいるけど、都会から遠く離れた場所にいたときの記憶や感覚は消えないものなので。

ですよね。でもそれって同時につらいことでもあると思います。まず現実的に時間のせいで永遠にティーンネイジャーではいられないし、私は「Rookie」を存続させるためにニューヨークに住んで、ビジネスパーソンにならなければいけない。ここ数年オンラインメディアの状況は良かったし、「Rookie」にとっても存続するのが広告面からすると簡単でした。

でも、これが日本でも起こっているのかは分からないですが、去年か2年くらい前からアメリカの多くのデジタルメディアは苦戦していて、たくさんのメディアが縮小するか完全に閉鎖してしまった状況でした。だから今「広告方式」はもう機能しなくなったんです。退屈な話をしてしまいましたが(笑)

——よく紙の媒体が縮小をしたり廃刊したというニュースを見る気がするのですが、デジタルメディアでも起こっていることなのですね。

ものにもよるのですが、たとえば「Teen Vouge」は紙媒体を休止してデジタルメディアに移行しなければいけなくなりました。なぜかというと「Teen Vouge」は「Condé Nast」という大きな出版社の傘下に置かれたからです。「Teen Vouge」は「Vouge」のように制作費がかかるので、「Teen Vouge」の制作費はすごく高いです。

でも一方で、今みんなに紙媒体をやるべきだと言われるのですが、「Cherry Bombe」というマガジンがあって、半年に1回発行で、1部50ドルするのですが、すごく美しくて、的確で細部まで行き届いた視点を持っているんです。
なので私はインディペンデントで出版することがもっと手軽になればいいなと思っています。
それに「Teen Vouge」とは違って、彼女たちは大きいチームではありません。なので製作をするのにそんなにお金がかからない。それに彼女たちのマガジンは大きな会社の傘下にありません。なので物事を進めるのがとてもスムーズだと思います。私は両方で働いたことがあるわけではないのですが、消費者の推測としてはそういう認識です。私たちもそういうふうにたとえ年に2回の発行だとしても紙のマガジンができたらすごくいいなと思っています。それに私たちがマガジンを始めた頃よりもインディペンデントでマガジンを発行することが本当に手軽になったのだとしたら、とてもいいことですよね。

——面白い変化ですね。

本当に変動の多い業界だと思います。今私は金融業界で勤めている人にたくさん会ったりして、できるだけビジネス側の部分を理解しようと努力していますが、多くの人はメディアにお金を投資したがりません。なぜならテクノロジーは一度組み立てるとそれ自身で利益を生み出すことができます。たとえばSNSなどのツールはアップデートし続けたり、人々がそれをどう使っているのか慎重にならないといけないにしても一度作ったら使い続けられる。それでもやらないといけないことはたくさんあって大変なことだけれど。
でも書くことや写真を撮ることなどに比べたら人間の力は必要ないですよね。 ストーリーを伝えるのはすごく骨の折れる作業だと思います。うまくいくのに決まったやりかたもないし。とにかく私が言いたいのは今の時代にメディアを作っている人たちをすごく尊敬しています。なぜなら音楽、映画、出版、これらの業界はあまりに急速に変化しているにもかかわらずストーリーを伝えることはいまだにすごく大事だし、必要ではなくなることもないから、私はまだそれをしようとしている人たちにすごく愛と尊敬の念を持っています。でもすごく厳しいビジネスです。

——そしてあなたもその一員ですよね?

そうです。私は今もし「Rookie」がツールか、サービスだったらどんなふうになるかなと考えています。私たちはコミュニティを持っていて、お互いとすごく繋がりたいと思っています。構造的に出版はそれを完全にサポートするわけではないので、出版ではないもので人々に何を与えられるかを考えています。でも出版もそれの大切な一部だと思っています。なぜなら私は1人の読者で、「Rookie」にたくさんの読者がいるのもわかっています。そして私たちのマガジンの読者ではない人たちも何かの読者で。だから今は面白い時期だと思います。これから何が起こるのか楽しみです。なぜならこれからメディアでお金を稼ぐ新しい方法が出てきて、私たちは方法を変えなくてはいけなくなると思うからです。それが何なのかはまだ分かりませんが。

——「Rookie」を始めた時にマガジンを大きくするために助けてくれた人などはいたんですか?

自分のブログで「10代の女の子向けのオンラインマガジンを始めたいんだけど、あなたの作品や意見を送って」と書くと約3000通の応募がありました。それと同時に私が作ったzineを買ってくれた女性からも連絡がありました。5部くらいしか作ってないんですが、彼女はその1部を買ってくれて「手伝うよ」とメールをくれました。加えて80、90年代に「Sassy Magazine」の編集長だったJane Pratteが援助を申し出てくれました。なぜなら私は「Sassy Magazine」のことをいつもよく「『Sassy Magazine』が今も存在したらどんなふうになるんだろう」「なぜ90年代は革命的だったのか」というふうによくブログに書いていたからです。

なぜ「Sassy Magazine」についてよく書いていたかというと、喪失感がありました。あなたが言ったように多くのメディアは若い女の子たちに物を売ったり、男性によって作られたものばかりだったからです。なのでJaneが私に援助を申し出てくれて、Anaheed Alaniも援助を申し出てくれて、オンラインで出版をやっている人たちに会うために何度かニューヨークに足を運んだのを覚えています。残念なことにその多くはもう存在していないのですが。

Anaheedの元夫のIra Glassが「This American Life」という20年前くらい前から始めたラジオ番組を持っていて、彼が私たちに広告がどうやって機能しているのか説明してくれる人を知っていたんです。「New York Magazine」は広告エイジェンシーを持っていて、彼らが「君たちを紹介してあげるよ」と言ってくれました。残りは数人の編集者を見つけて雇い、すべてのコンテンツは本当にコミュニティの中から生まれて、応募者たちからも、私たちが好んで見つけた人たちも参加してくれました。

「Sassy Magazine」のJaneが、今はもう存在しませんが「Say Media」という大きな会社の傘下でウェブサイトをローンチしたところで、それが「Rookie」を所有すると言ったんです。それで私はたくさんのアドバイスをもらいました。他のビジネスウーマンにもたくさん会って話す機会を得たので、私はメディアをローンチするのに十分な人々と話すことができました。彼女たちには「彼らにマガジンを所有させてはいけない、自分で全部所有しなさい」と言われました。なので私はマガジンの全てを自分たちで所有することにしたんです。

でも誰も「これがマガジンを大きくする方法だよ」と言ってくれるような人は現れなかったですね。時々そういう人がいてくれたらよかったな、とは思いますが。なぜかというと今私はマガジンを運営するための全てのことを理解しようとしているけれど、あなたがボランティアで「Sister Magazine」を運営する難しさについて話していたように、「Rookie」が数人の情熱だけで持続しているような状態にはしたくなかったんです。
今はいいメンターたちを見つけたと思っているし、ビジネスの世界ではAudrey Gelmanという女性がニューヨークで「The Wing」という全て女性で構成されているワークスペース兼ソーシャルクラブを始めました。彼女みたいな人は私が色々なことを理解するのにとても助けになっています。なぜかというと私たちは組織を大きくしたいし、もっとたくさんのことができるようになりたいし、その活動の最中だからです。

——アメリカの文化が羨ましいです。日本でそういうふうにうまくマガジンを運営する方法などをレクチャーしてくれたり援助をしてくれるプロフェッショナルな人たちはいなかったです。

私の知り合いで誰かメンターになってくれる人がいるといいんですが…。

——世界経済フォーラム発表のジェンダーギャップ指数ランキングでアメリカは49位、日本は114位にランクしていて、数字からもわかるように日本はアメリカほどフェミニズムが根付いていないので、メンターのような形で頼れる人を探すのは本当に困難なんです。学校の義務教育ではジェンダーについて学ぶ機会がほとんどなく、主要メディアから流れてくる情報は性差別的な情報で溢れていて、自然とそれに慣らされてしまって性差別的なことに対して気付くことができる感覚を養うことさえ難しい状況です。それゆえに女性自身が性差別的な論理を内面化していまっていることも多いです。#Metooのムーブメントもアメリカと比べると盛り上がり方が全く違います。タヴィさんにとって日本の女の子たちはどんなふうに映りますか?

ここにきたのは3度目だし、数日しか滞在していないので私が日本のフェミニズムについて言及するのに十分な知識があるとは思わないんですが、正直私は今日色々な話を聞いて驚きました。昨日イベントの準備を手伝ってくれて、色々なところに観光に連れて行ってくれた女の子が「日本ではあまり政治について話をしないし、ほとんどの人がフェミニズムが何なのかも知らないし、#Metooの運動もそれほど広がっていない」と言っていました。
私はとても表現豊かな日本のファッション、素晴らしい歴史を持っている若者文化、音楽やファッションを消費していて、日本の若者はエンパワメントされていて革新的だと思っていたので驚きました。

それと、あなたが言っていたように性差別を内面化してしまう力はとても強力だと思っています。アメリカでも多くの男性、時には女性までもが性差別は深刻な問題だとは考えていませんでした。ドナルド・トランプが大統領に選ばれるまでは。今になってみんな「私たちなんてことしたの!」と言っています。今までもうすでに状況は悪かったにもかかわらずです(笑) 
あともうひとつ、#Metooのムーブメントが広まっていない業界があります。音楽界やファッション業界にはあまり到達していませんよね。なぜかというとそうなると誰も残らなくなるからです。これらの業界は数人の男性を選んで告発して運動が止まったような雰囲気があります。
そしてドナルド・トランプが大統領になってアメリカ人たちが学んだのは性差別、人種差別などの問題は私たちが思っていたより深刻だということです。

私がここでのことを語るのは難しいですが、今アメリカで起こっていることから私が学んだことで日本にも当てはまるのではと思ったのは、たとえばポップ・カルチャーやメディアは、政治に対する認識や問題を完璧に反映しているわけではないし、それだけを見ているだけでは分からないことがたくさんあるということだと思います。


Tavi Gevinson(タヴィ・ゲヴィンソン)
10代の女の子向けオンライン・マガジン「Rookie」の編集長であり、創設者。2011年、15歳の時に「Rookie」を立ち上げてから大きな話題を呼び、トークライヴ「TED」、「the Economist’s The World」、「the New Yorker Festival」、「the Melbourne Writers Festival」やオーストラリア・シドニーのオペラハウスでも講演を行なった。
また、女優としても活躍し、映画「おとなの恋には嘘がある」、NBC「ペアレントフッド」などに出演。 2014~2015年にはブロードウェイの舞台「This Is Our Youth」で主演を務めた。

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記事:Sister Magazine編集部(つかさ)
イベント主催、ご協力:青山ブックセンター・DU BOOKS

『ROOKIE YEARBOOK』日本版刊行記念【前半】Tavi Gevinson(タヴィ・ゲヴィンソン)来日イベントレポート